Takeyoshi TANUMA / Feb. 2024

2023年12月に開催した眼福額場に関する額装の最後の一点。2022年に亡くなられた写真家田沼武能さんの「カタルニア・ロマネスク」という写真集を巡る不思議なめぐり合わせ。
この額装の依頼主は果たして誰なのか、僕は勝手に田沼武能さん御本人だと思っています。眼福額場では先にご紹介していた篠田太郎さんと、今回の田沼武能さんからの天国からの額装依頼があったと、そう思っているのです。
様々な時間軸と場所を超えて色々な人の想いが重なりあって片隅にやってきたこのプリント(ポスター)を単純に額装する気にはなれず、だけどできるだけシンプルに、素朴に仕上げたい。悩みながら、一度タモ材を鉄媒染で黒く汚してから時間をかけてやすってきれいにしていきました。やすることで角が落ちて手仕事による丸みが帯びてくる材を見ていると、ロマネスク彫刻の丸みとも繋がったような錯覚も覚え、この形でいいんだと確信が持てました。拭いきれない黒ずみは残ったままになり、オイルフィニッシュで深い艶をまとった額は、今できたばかりなのにどこか時間を含んだものになったように思います。
表面はアクリルではなく低反射ガラスをいれました。平面である写真作品にはより平滑なガラスを使うことがあります。鑑賞を妨げる歪みがなく、シャープに見えるためです。低反射は高級ですが画中の黒を見せるために入れました。
ガラスは重たくなるので裏面をシナベニヤとホウノキでパネル仕立てにして、裏板と枠を一体化させ全体で支えています。紐はNASAが開発したという耐久性が高く伸びないケプラー紐。マットは特厚ピュアマットのオフホワイト。できるだけ画寸ギリギリに窓抜きしました。
この額は「カタルニア・ロマネスク」を愛読し、自身の制作の原点にあるという建築家のもとへ贈られました。田沼武能さん喜んでくれてるかしら…。



